2016年6月3日金曜日

未来6月号

経血を洗い流す夜 非道いことわたしにしたひと元気だろうか

残された食事は腐敗し始めて夏のすべてがわたしを責める

被害者の顔した人の回廊に夕立もっと怒鳴ればよかった

加湿器の霧を見やれば不細工な記憶ばかりが手を振っている

教わった星を数えるいつまでも屑のまんまで生きていてね



今が満たされているからと言って、忘れていないわけではない。
私の場合歌にしようと思うのは、その人に対して言いたかったことが言えなかったからなんだろうな。

未来5月号

人づてに聞いた近況 強くない靴に霙が染み込んでゆく

振り切った針を戻して暮らしてもあなたの背骨みたいにいびつ

雪落ちる音を寝床で聞きながら明日向けられる幻滅のこと

どちらかが不幸になればもう一度優しくし合えるのか塩むすび

一月の西日に街は輝いて友から脱落すること決める

終点のようなコインランドリーいつの間に増えた荷物が回る



この頃はまだ冬で、日が落ちるのが早かった。
公園で遊ぶ娘を見守りながら西日がまぶしくて、ずいぶん連絡していない人のことを考えていた。

未来4月号

冬の陽に炙り出されて外に出る優しくされた思い出が邪魔

本性の断片として晒したるピアスが放つみどりの深み

遠くから聞こえるサイレンいつだって途中からはただ痛いだけ

乳液にひたひた柔く戻されて今日もあやまってばかりだった

友はいつ嘘だったこと知るだろう深夜瞼に乗せる銀粉




未来短歌会に入会しました。
選歌欄は大辻先生の夏韻集です。

改めて誌面に載って送られてくるのを見ると、
載って恥ずかしい歌は送れないなと思います。
未来や夏韻集の方たちに、少しでも名前を覚えてもらえるようがんばります。