2009年9月25日金曜日

Unknown

正妻のことは知ってるくちびるの色がきれいなよく笑うひと

この部屋は照明までがわたしのことばかにしているようなんだよね

電話する代わりにコンビニへ出かけた 夜風で少し現実に戻る

いまわたしこのまま冷静をつかめばあなたのことをきらいになれる

朝起きて顔洗ってもおんなじで毎日毎日絶望してる

主役では絶対なくて脇役である気もしない怒る気もしない

こんにちはさようならですませればよかったんだねよかったんだね



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なぜだかわからないけれど、
好きな人に彼女やら奥さんやらがいるような歌ならいくらでも出てくる気がします。
きっとあの恋のインパクトは相当だったんだな。

壊れても何度もむりやり直して抱きしめてきた4年間。
決して戻らない4年間。

2009年9月23日水曜日

Unknown

黄色いカーディガン

黄色のもの、と考えてすぐに思い浮かんだのはカーディガンでした。
というか、それくらいしか思い浮かばないほどに黄色いものを持ってませんでした。
黄色はすきです。明るくて、さわやかそうで。
でも身につけるものの色としては敬遠しがちなのかなあ、と思います。

そのカーディガンはたぶん予備校生のときによく使っていた駅ビルで買いました。
だからとてもじゃないけれど高いものとかではなく、どこにでもあるような薄手の、
だけどゆるやかなフォルムがなんとなく気になって灰色と色違いで2着買いました。
ほんとに鮮やかな黄色で、着るととても目立ちます。

普段着るものといえば灰色とかベージュとか黒がどうしても多いので、
着て出かけた日はとてもどきどきしました。

この間タンスから出して久しぶりに袖を通しました。
こんな風にときどき思い出したようにひっぱりだして、そのたびに少しどきどきしながら着ています。
行く先はただの夕飯の買出しでも、散歩でも、
いつもと違う色を着ているだけでちょっとうれしくなります。

普段着ないから色だからこそ、特別なものになるんだなあ、と思います。
気に入ってはいるけれど、ときどきしか着ない。
どきどきするから、ときどきしか着られない。
だけどきっとまた着たいと思う日がくるだろうから、そのときの自分のためにちゃんと大事にしなきゃですね。



いつもより自分をどきどきさせたくて黄色い服を選んでいる朝(藤野唯)


***


ゆびおり短歌のイマイさんと「おすそわけ」という企画を始めました

相手の出したお題にそって日々のことや思い出+短歌を交換日記していきます。
第1回のお題は「黄色」でした

だんだんと素敵な形にしていけたらいいなあ、ということと、
さりげないことや小さなことを見逃さないように書いていきたいです。

次回の更新は約2週間後、イマイさんのブログで、
お題は「鞄」です。

2009鑑賞 005

005*調

調子など狂ってしまえ 咲きたてのパンジーたちとひそひそ笑う (日向奈央)
悪意のある上句ですが、パンジーたちと、という可愛らしさに和んでしまいました。

雨が降る調べてわかることなどに真理はないと嘯く君に (遥遥)
「君」の台詞がすきです。

わたしより愛しいものがあるひとの鼓動の調べ おかえりなさい (田丸まひる)
静かな哀しさ。

「カンパニュラ」名など調べて植えてをり 風と暮らさな 影と遊ばな (迦里迦)
下の句が好きです。リズムも内容も。


2009年9月16日水曜日

甘くて白い幸福な砂糖

一度しか来ない夏の終わりだしあなたに嘘をつくことにする

しあわせになろう 手に入らないから好きだったということを忘れず

悲しくはないけど今日もたべている甘くて白い幸福な砂糖

さよならを言っても信じてくれないね だってどうせまた会うものね

長袖と長い夜がうれしくて片思いしててよかったと思う

おきよめのつもりで歯みがきをしている第3者とキスした翌朝に

ほんとうは仲良くしていてほしいんだ 角のドーナツ屋はきょうも素敵

あの細いうでにも温度はあるのだろう だれかに熱をうつされるのだろう

もし100回うまれかわったとしたって何回あなたとしゃべれるだろう

ぺたんこの靴なら似合うと思ってる ちっぽけなことによりかかりたい

連休がきたってわたしはわたしだしあなたはあの子を愛しているし

1秒でいいから何か思ってよ 今夜はあったかくして眠ろう

あのひとじゃなければこんなに簡単にさわれてしまうことに驚く

心臓はわたしにだってあるのだとちゃんとわかってしまった夜だ



2009年9月2日水曜日

Unknown

今日もまたわたしは誰かを見下して屋上で夕日を眺めたい

似たような男ばっかで似たような女とばっかり抱き合っている

自画自賛する人が嫌いその声を録音でもして聞いててほしい

きみはまたおんなじ理由を押し付けて次の男もそれで別れる

あなたとはちがってヒールもはけないし可愛くないので返してください

ももいろの花びらを全部ちぎりたい わたしあの子がこんなにきらい

最高に調子に乗ってたあの夜のきみに不当な扱いを受けた

コブクロを偶然聞いてしんみりとしたくて夜更かししていたんじゃない


Unknown

004*ひだまり

すこしだけ苦い風邪薬を春のひだまりで溶かす君のはなうた(さかいたつろう)
読んだときさすがだなあ、と思いました。

おだまりよひらひらひらさらさらさらのわたしさかまつげちょっとひだまり (久哲)
これ好きです。「おだまり」と「ひだまり」にちょっとくすっと笑ってしまう。

ひだまりを駆ける子どもの声遠く冷えた布団できみと抱き合う(denkoo)
そのギャップというか、明暗がよくわかる気がして。

美術準備室にひだまり閉じこめて肺に満ちてく石膏のしろ(加藤サイ)
004で一番好きかなあと思いました。