2008年11月21日金曜日

Unknown

やさしさがほしかったから誰にでもやさしくしていたのは嘘じゃない

もうずっと布団にもぐっていたかったかなしみなんて見逃したかった

傷がつくのは一瞬のことなのにあとから自分で広げて泣くんだ

あのひとは彼女と別れたけど悲しいくらいに私に関係はない

ぜいたくは言わないけど半年くらい眠らせてほしい愛してほしい

もう歩けないわけじゃなかったんだけど助かりたかった倒れたかった

ただでさえ泣き出したいのに鏡にはみにくさだけしか映っていない

彼女にはわかるはずないということがこの悲しみのたったひとつの

2008年11月20日木曜日

Unknown

男が二股をかけることに別に疑問はなかったけれど、
いざ自分がされてみるとやっぱり少し驚いた。

その日、彼の部屋で雑誌を読んでいたら呼び鈴が鳴って、
彼が開けたドアの向こうには知らない女の人が立っていた。
一瞬「あ」という声と、変な空気が流れたけれど、
女の人は全部知ってたのか今知ったのか、帰っていってしまった。
それはあまりにあっさりと起こってしまって、
さっきまでの部屋の空気が嘘みたいで、なんだかおかしかった。
さっきの声は彼のか彼女のかどっちだったろう、とかどうでもいいことを考えながら、向こうを向いて少し離れて座る彼の背中を見ていた。
彼は黙っていたけれど、
何か言われそうだったので、先に口を開いた。
「ねえ、私のこと好き?」
彼の表情が変わった気がしたけれど、待っていた。
そして10秒くらいあと、ぽつりと彼は、
「好きだよ」
と言った。
「そう、じゃあいいや」
「え」
そう言って鞄を持って玄関に歩いていった。それを彼はどんな目で見ていただろう。
赤いミュールをはいてドアノブに手をかける。
その動作をおどろくほどスムーズに出来て、おどろくほどためらわずに私は言った。
「じゃあね」
それで終わりだった。
男が二股をかけることに別に疑問はなかったけれど、
少し驚いたくらいで怒る気も泣く気も起こらない私は、どっちにしろここにいてはいけない。
最後に彼のほうを見たら、情けない顔をしていた。
どうせあの子と晴れて付き合うことになるくせに。
もう少しうまくやんなよと言いたかったけど、言わないでおいてあげた。


よく出来た女とほめて 泣かないでいるのが偉いか知らないけれど

2008年11月19日水曜日

一生

恋人にもらったものを、別れてしまったあとに捨てる時期は人それぞれだ。
友人は割とすぐに捨てると言うけれど、私はある程度時間が経ってから捨てる。
別に未練があって、そのものを見ては泣いたりしているわけではない。
それどころか見えないところにしまってしまう。
そしてその存在を忘れることもなく、日々を過ごしていく。
おかしいかもしれないけれど、そうすると突然「捨ててもよくなる」日が来るのだ。
だいたい数ヵ月後とか半年くらい後だけれど。
その日が来るとほんとうにすっきり捨ててしまう。
一緒に撮った写真もプリクラも、ストラップもお土産も、
別れた日にもらったピックも(そんなことをする男も男だけれどもらう私も私だ)きれいさっぱり。

もらったものを捨てることって、2度目の別れみたいだと思う。
時期は人それぞれだけれど、別れの後にもう一度ちゃんとその恋にさよならを告げて、そしてまた次の日からを生きていく。
未練はないといいながら、ほんとうはまだ後ろの方を見ていた自分も、
もう前を向いて良いかなと思える日が必ず来る。

同じことをまた繰り返すとしても、
その日はやってくる。ちゃんと。



忘れてもいいよともう言えるんだけど このまま会わない一生言わない

2008年11月16日日曜日

Unknown

教室へ入っていった遠い遠い君を見る朝にやにやしちゃう

授業中ノートに隠した手紙とか隠しきれていない雑誌とか

マニキュアのはがれた小指見るだけで吹き飛びそうな軽いゆううつ

学食に走る君を見ちゃったので ついついポテトを買いに行っちゃう

ほんとうはチョークの塗りつぶしにくさが好きで落書きをやめられない

帰る前もういちど君を見られても見られなくても明日があるか

ああそうだパルコ寄ってこ何買おう何買おうかなにやにやしちゃう



+++



朝、わらって挨拶ができたかできなかったか、
それだけで1日の気分が決まったんだあのころ。
なんて壮大で、なんてちっぽけで。
ああ二度と戻れない。

2008年11月13日木曜日

Unknown

同時に2人の男と付き合っていたときがある。
19のときの春に告白してくれて付き合っていたサラリーマンが忙しい人で、なにかとすねてばかりだった私は、ちょうど夏の終わりあたりによく行っていたコンビニの店員に告白されたのだ。
彼氏がいることは言わなかった。
別に気を遣ったわけじゃなく、面倒だったから。
忙しいサラリーマンにも駄々をこねるつもりはなかったし、
コンビニの店員を怒らせるつもりもなかった。
浮気してる気なんてなかった。
ただ自分は女の子で寂しいのだからと、むしろ当然のように思っていたと思う。

だから別に、ばれたってよかったのだ。
だから別に、驚きも困りもしなかった。
サラリーマンが久しぶりにデートに連れてってくれた日、出かけ先の街でコンビニ店員に会った。
なんだかひどく怒っていたような気がするけれどあまりよく覚えていない。
彼が何かを怒鳴って去っていったあとに、サラリーマンのほうを見たら、なんだか悲しいような変な笑い方をしていた。
あなたが忙しいせいじゃない、と言おうとしたけれど、
なんだか妙に心拍数が上がって何も言えなかった。
ああそうか、と思った。
ばれたってよかったんじゃない、
ばれてほしかったのか、と
そのとき初めて思った。


傷つけているうちが花 無意識じゃなくなっても続けられるのなら

2008年11月12日水曜日

Unknown

ずっと前に好きだった人が彼女と別れた。
そのことを考えなかったわけではもちろんないし、そのときどうするかも考えていなかったわけでもないのに、
それは大学の廊下で本人の口からあっさり伝えられた。
彼が帰る前に何かを言いたかったけれど、
私の数年間がつまって、つまりすぎて
かえって何も言えなかった、
おつかれ、くらいしか。
でも喧嘩別れじゃなかったし、と彼は言う。

これがあと2年早かったらどうしていただろう。
今彼氏いなかったらどうしていただろう。
結局どうにもならなかったのかな。
その数分間の間にたぶんそんなようなことを考えたけど、
今の自分には家に帰れば出迎えてくれる優しい恋人がいるし、その恋人の大切さも失う怖さもわかっていたので何をすることもなかった。


いつかくるのかと思っていた日が来てしまった。
だけど、どうすることももうない。
あの頃の私ならどうしたかな。
どうしたかな。


あの頃の私は泣くかな この人が3年後に別れるのを知ったら

2008年11月9日日曜日

Unknown

ディズニーランドが苦手で、女性にも男性にも大人気の某イケメン俳優兼歌手が苦手だ。
と、ここ最近ずっと言いたくて仕方なかった。

なぜだかは知らないし、決して嫌いなわけではないけれど、
行きたくないしあんまり見たくない。
ディズニーに行くくらいなら水族館とか買い物に行きたいと思ってしまう。


可愛い女の子が苦手だった。
ディズニーストアで買ったストラップを、彼氏(しかも私の好きな人)とおそろいでつけているような。
福山が好きだとかかっこいいとか言っているような。
それが単なるひがみや嫉妬から始まったことだとしても、
彼氏が出来て幸せいっぱいな今になってもそれは抜けない。
なぜだろう。
別にイケメンが嫌いなわけじゃないのに。笑

もっと若い頃は、今よりもっと可愛い女の子が苦手だった。気がする。
男に甘えぬくようなことは出来ないと思ってたし、
自分なら男に混ざっても働きぬけると思っていた。
でもたぶん、いや絶対、心のどこかで可愛くなりたいと思っていた。
そんな10代の、若さゆえの考えは少しずつ少しずつ変わり、
今は素直に可愛い女の子になりたいと思っている。
目覚しい進歩である。

結局女の子はいつになっても、可愛い女の子に嫉妬しながら、可愛くなりたいと思っているんだろうなあ。
自分なりのプライドを守りながら。



なにもかもストレスを理由にしてる 夢の国に行きたくないこととか

2008年11月6日木曜日

Unknown

私は、その人のことが好きだった。
そばにいすぎて感情の境界線がよくわからなかったけれど、きっと大好きだった。
今はお互い恋人がいるけれど、
そしてそれゆえに前よりは会う機会がぐっと減ったけど、
やっぱり会うと安心してしまう。
彼にだけ恋人がいるときの私はひどかった。
他大の彼女がいるのに、同じ大学同士の私と彼は大学の時間ほとんど一緒にいて、
授業も隣やまあまあ近い席で受け、
課題も一緒に出しに行った。
彼女がいることは重々わかっていたけれど、
入学当時から一緒にいるもんだから、なんていうか、止まらなかった。
私にとっていちばん居心地のよいところがつまりは、彼の隣だったのだ。
そして彼女のわからないところも私ならわかるだろう、わかりたいという傲慢さもあったのだ。

そんな彼ともちろん何もなかったわけではなく、しっかりと「何か」はあった。
手を繋ぎ、抱きしめられ、
その少し先のことも1度だけあった。あくまで「少し先」で「1度だけ」。
だけどその1度だけで私の心は折れた。
今までにくたらしく、ずうずうしく隣に居続けた私も、折れてしまった。
彼が嫌なわけではなく、
彼女がいる人とそういうことをすることの重さに、現実としてぶつかってしまったのだ。
それくらい私は弱かった。
その翌日はがんばって隣の席で授業を受けたけれども、
やっぱりなにかに無理があったせいか、疲れただけだった。

それから少し時間が経って、また私は彼と元通りになる。
そうやって、「何か」を越えては、ふたりして知らない振りして無理して笑って、いつのまにかまた力を抜いて隣にいるのだ。
彼にとってはずっと妹だっただろうけれど。
これから先、
きっと別々の人と結婚して、子供を生んで、
それでもたまに会うときには、この安心する感覚は忘れない気がする。

寒い寒い冬の夜、上着を掛けて肩を抱いてくれたことや、
繰り返ししては笑っていたくだらない話を忘れても、
あの安心感だけは。




あの星がなかったらその引力で 結婚できてたかな私たち



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短歌は好きな人に対して昔思っていたことで、
そしてかとちえの短歌教室「宇宙」に投稿した作品です。
短歌教室ではもうひとつの歌のほうが選ばれましたけど(笑)

今、そばにいる人のことがほんとに好きだけれど、
あの頃あの人のことが好きだったのもほんと。

長文て書くとつかれるにゃあ。